1890年に明治天皇が発した教育勅語(教育ニ関スル勅語)が、127年も経った今、2017年に再び話題になっている。正直言って、現代人にとっては教育勅語という言葉など聞いたことがない人も多いと思う。かくいう僕自身も、そんな1人だった。
ただ、ここ最近はニュースだけでなく書店でも「教育勅語」の言葉を目にするようになって、さすがに内容や問題点が気になってきた。日本人の道徳観とか、生きる意味について書かれているイメージがあったので、このブログでも取り上げられるのではないかと思ったのだ。
で、実際に読んでみたら身震いした。良い意味でも悪い意味でもだ。
教育ニ関スル勅語(十二の徳目)
実際にその内容をここに転載してみた。具体的には「十二の徳目」というものがあり、戦前における学校での道徳教育(修身と呼ばれていた)においては「二十五の徳目」に細分化されて教えられていたらしい。
- 一.父母ニ孝ニ
- 親や先祖を大切にしましょう
- ニ.兄弟ニ友ニ
- 兄弟は仲良くしましょう
- 三.夫婦相和シ
- 夫婦はいつも仲むつまじくしましょう
- 四.朋友相信ジ
- 友達はお互いに信じあいましょう
- 五.恭倹己ヲ持シ
- 自分の言動をつつしみましょう
- 六.博愛衆ニ及ボシ
- 広くすべての人に愛の手をさしのべましょう
- 七.学ヲ修メ業ヲ習イ
- 勉学にはげみ技能を身につけましょう
- 八.知能ヲ啓発シ
- 知徳を養い才能を伸ばしましょう
- 九.徳器ヲ成就シ
- 人格の向上につとめましょう
- 十.公益ヲ広メ政務ヲ開キ
- 広く世の人々や社会のためにつくしましょう
- 十一.国憲ヲ重ンジ国法ニ遵イ
- 規則に従い社会の秩序を守りましょう
- 十二.一旦緩急アレバ義勇公ニ奉シ
- 勇気をもって世のためにつくしましょう
教育勅語への感想
これを見て思うことは「なんだ、基本的にめっちゃ良いこと言ってるじゃん」ということだ。ちなみに、明治天皇に対して何という口の利き方だと言われても、それは困る(笑)
なお、教育勅語の内容を実際に確かめてみて、僕が身震いした理由は2つある。
まず1つは、今の僕自身が「こうならなければなぁ」と努力をしておこなっていることが、「そのまますべて」ここに書かれていたことだ。文部科学省のお偉い方が、いまでも通用する普遍的な内容も含まれていると言っていた理由が分かった気がする。
そしてもう1つは、最後2つの項目において、当時の『天皇』という「絶対君主の存在」が、ここぞとばかりに強調されていて身震いした。国もしくは天皇のためであれば、何があっても尽くしなさいというちょっと恐ろしい精神である。
現代においては「社畜」というキーワードがよく使われるけど、国家レベルで行き過ぎていた当時は「国民奴隷」という形で問題化していったのだろう。カミカゼアタックとか。
問題のある部分をきちんと理解すべき
そういえば、同じ明治時代には、福沢諭吉の書いた「学問のすゝめ」がある。こちらもまた、同じように「いまでも通用する普遍的な内容」が含まれているのは言うまでもない。だけど、そんな「学問のすゝめ」にだって、戦争に対する考え方には身震いする内容がある。
なぜこれを教育に使うのか?
そもそも、世界大戦や原爆をまだ経験していない100年前の「君主主権」の時代に書かれた内容だ。日本国家としても戦後の1948年には「国民主権」に反するという理由で、教育勅語が廃止されている。
それなのに今、なぜこんなものを教育現場で使うのか? しかも名前を変えずに? 森友学園のように復唱させている教育現場があるとしたら、これはやはりアウトだろう。ただ、政府の正式な見解では「教材として使う分には問題ない」ということなので、それなら納得だ。
教材として教育勅語を見せる教師たちには、いまでは通用しない部分もしっかり教えて欲しいものだ。問題のある部分は「しっかり」区別し、最後2つの徳目は、日本国民が天皇のために尽くしていた「君主制」の名残りであると教えれば良い。そして、今の時代は「世界平和」と「自分の幸せ」のために尽くすようにしましょうと、置き換えれば良いのではないだろうか?
これからの僕たちの生きる意味
教育勅語の問題点が取り上げられている中、この記事を見て皆さんはどう思われただろう? 今まで教育勅語というものが何か知らなかった僕のような人も多いだろう。
教育勅語には「普通に良いこと」も書かれているので、読みものとして、1度くらいさらっと目を通してみるのは良いと思う。歴史的に意味のある内容でもあるし、知っておいた方が良いという内容でもある。
ただ僕たちは、国民奴隷になるために生きているわけでもなければ、社畜になるために生きているわけでもない。家族や友達を大事にし、幸せに暮らし、才能と人格を伸ばして広く世の中のためになるためには、色々な選択肢がある。答えは、自分自身で見つけなければならない。